入居テナント紹介 [1-G]
THE LOCAL TUAD ART GALLERY
東北芸術工科大学学長 中山ダイスケさん
Q:東北芸術工科大学がQ1にひらく空間とは、どんなものでしょう?
東北芸術工科大学(以下、芸工大)はこれまで、山形市の中心街からはすこし離れた小高い丘の上にあるアートとデザインの学校として市民のみなさんに知られてきました。近年は、そうしたすこし遠い距離にあったアートやデザインというものをもっと身近に感じていただきたいという想いから、丘の上からまちなかへ降りていく機会を積極的につくりだし、山形ビエンナーレというお祭りや、リノベーションによるまちづくりや、中心市街地における準学生寮の整備などさまざまなイベントやプロジェクトで、まちやひとにリアルに触れながら活動してきました。
そうしたなか、芸工大がQ1にテナントとして入るにあたり、はじめのうちは、大学のサテライトにするという考えもありました。けれども、そもそもQ1という場所はユネスコ創造都市であるこの山形市の新しい拠点であり、市民のための空間です。芸工大という学校が生まれるよりもずっと以前からこのまちにはさまざまな創造性が育まれ、豊かな文化と歴史を積み重ねてきたわけですから、そうしたこのまちの創造的資産のための空間づくりこそがQ1にふさわしいとの考えから、芸工大との関係のあるなしに関わらず、このまちに生まれそして根付いてきたクリエイティブが集まる場所にしていきたい、という方向で構想を進めました。
そこでわたしたち芸工大が用意したのは、真っ白な、ホワイトキューブの空間です。ここは、山形市民のためのレンタル・ギャラリーです。このまちには、絵を描いたり、写真を撮ったり、その他にもさまざまな表現活動をされている方が数多くいらっしゃいます。しかしその反面、その方たちがじぶんの作品を発表できる場は決して多くありません。このホワイトキューブは、そうした活動をされている市民の方たちのための展覧会の場となるものです。わたしたち芸工大は運営サイドに回り、どんな方に展覧会をやっていただこうかとか、どうプロデュースしようかとか、どうやって集客しようかというような裏方役に回りサポートしていきます。
表現活動をされているみなさんが「いつかはあのQ1のギャラリーで展覧会をやりたい」と目指すようになったり、いまは大学のギャラリーで発表している学生たちが「次はきっとQ1でみんなに作品を見てもらいたい」と夢見るようになったり、そんな憧れのステージみたいな場所に育ってくれたら、と願っています。
Q:この Q1という場所は、これからどう作用していくのでしょう?
「ユネスコ創造都市」と言われても、市民ひとりひとりにとっては実感が湧きにくいものかもしれません。けれども、まずはそこからはじまるということでいいのではないでしょうか。創造都市ネットワークに認定されたということは、世界という目線が「あなたのまちは文化のバランスがとてもいいですね」「あなたのまちはすごくいい可能性を秘めていますね」という褒め言葉をくれた、ということ。外側から投げかけられたその言葉をきっかけに、これから少しずつ「なるほど、そういうことだったのか」と市民自身が気づいていくことになっていけばいいのです。Q1という場所は、そしてまた芸工大が運営するこのギャラリーは、そのような気づきが生まれ、それがやがては市民の誇りへと醸成してゆくプラットフォームなのです。
まだはじまったばかりの運動体であるQ1にとって、これから問われるのは継続性です。一過性の花火のようなクリエイティブもちろんいいものでしょうが、その場所でずっとなにかをやり続けるということもまたとても大切なことです。これから10年、20年と続いていくためには、Q1が市民ひとりひとりにとって関わりのある場所になれるかどうかが鍵になってきます。
「クリエイティブなんてじぶんには関係ない」と感じている市民の方もいることでしょう。けれども、この場所は表現活動をやるひととやらないひとを分断するものではなく、また、アートを学んだひととそうでないひとの間に線を引くものでもありません。クリエイティブをきっかけにみんなが関わりあい、アートやデザインをきっかけにみんなが混じりあうような、誰にとってもひらかれた場所です。たとえじぶんでは絵を描かないひとでも、お友だちが展覧会をするとなれば、このQ1に来て、作品に触れ、なにかしら新しい発見をすることでしょう。アートに限らず、ここには面白い店があり、おいしいコーヒーがあり、ファッションも雑貨もあり、新しい出会いをもたらしてくれることでしょう。たったそれだけのことからでも、ひとりひとりの創造性が刺激され膨らんでいくきっかけになるのではないでしょうか。