YAMAGATA CREATIVE CITY CENTER Q1

【レポート】Q1グランマルシェ2024「マテリアル」


2024.10.15

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2024年8月29日(木)から9月1日(日)までの4日間、やまがたクリエイティブシティセンターQ1「グランマルシェ2024」が開催された。2022年にオープンした創造都市拠点が迎える、2度目の周年祭である。

第一回となった昨年も9月1日を中心とした日程で開催されており、「9月1日はQ1(キューイチ)の日」という山形市民への意識づけが図られている。実際その認知は少しずつ広まってきている印象がある。また、Q1前身の山形市立第一小学校旧校舎は、1927年の設立以来、長い歴史を刻み愛着を育んできた学舎であるだけでなく、文化的価値が非常に高い建造物であるが、あとわずか数年で設立から100年という記念すべき節目のときを迎えようとしている。

さて、前回までとの大きな相違点であり、また、今回のグランマルシェ2024においてなされた大きな試みのひとつは、「マテリアル」というテーマを掲げて「見本市」という見立てをしたということである。

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グランマルシェ2024ポスター

マテリアルとは「素材」、「なにかになる前の原料」といったような意味である。今回のQ1グランマルシェは「新しいなにかが生まれる前のモノをさまざまに並べた見本市ですよ」と語りかけるものであった。

実際、この4日間に並べられたのは(「並べられた」といっても「展示」「品揃え」というかたちもあれば「参加」「演奏」「登壇」「ワークショップ」「出店」「パフォーマンス」「トーク」などさまざまな、ときには「並べられた」ようには全く見えないようなかたちで「並べられた」のであるが)実に多彩な、たくさんのモノたちであった。

プロダクトであり人であり会社でありブランドであり…。より具体的には、アーティスト、建築家、陶芸家、ガラス作家、歌人、料理人、イラストレーター、画家、木工作家、漆芸作家、金工作家、酒屋、ニット会社、ベーカリー、コーヒーロースター、家具製作会社、酒造、スーパー、カレー店、居酒屋、菓子店、ジェラード屋、ブリュワリー、デザインカンパニー、アパレル、カフェ、農園、精肉店、花屋、ピッツァリア、本屋……などなど。その数は100をゆうに超えていただろう。そのどれもが山形に在るモノであったり、なにかしら山形に縁を持つモノであったり、ユニークな存在感を放つモノであったり。よく見ればそれら一つひとつにキャプションが置かれて丁寧に紹介されていたのも、この場が「見本市」であることの表現であった。

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右上/展示物とともにキャプションが置かれていた

一つひとつが優れてクリエイティブなモノとしてセレクトされているが、同時にまたそのどれもが、その先に新しい出会いのきっかけを待っているモノたち、として見立てられている。お客さまとして来場する市民や観光客の方たちとの出会い。異なる分野の事業者やクリエイターとの出会い。新しいコラボレーションやインスピレーションにつながるような出会い……。このグランマルシェによって、これからここで生まれるであろうそうした出会いを孕んだモノとして、並べられている。グランマルシェを通してそれらの出会いは現実のものとなって、次なる新しいクリエイティブの誕生を誘発する、というストーリーなのだろう。

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そもそも創造(クリエイティブ)は、特殊な才能を持った一部の人間だけができることなのではなく、むしろ市民すべてに関わるものである。一人ひとりはそれぞれに特別な存在であり、誰ひとりほかの誰かと同じではない。自分という一人の人間が、他の誰でもない自分の人生を生きるというクリエイティブな試みを続けている。
また、未知なるものと出会うことは、新しい自分に出会うこと。クリエイティブななにかに出会い心が動くということは、自分の中にクリエイティブななにかが生まれていることである。そういう日常を生きるということは、そういう人生をつくっていくことである。この山形のまちで今日という新しい一日を迎え、新しい出会いに満ちた時間を送ることは、このまちに生きる一人ひとりの創造的行為である。
ここを訪れれば、そういう出会いが自然と生まれ、こころのなかでクリエイティブのひらめきやプログラムが勝手に発動してしまう。Q1とは、そんなふうに市民一人ひとりの中にある創造性に働きかけるような出会いやきっかけをさまざまに仕掛けた舞台であり、装置なのである。
「マテリアル」というテーマには、そんなメッセージが込められていたのではないだろうか。

じつに、この4日間で7030人がQ1を訪れた。マルシェを楽しんだり、流しそうめんにチャレンジしたり、ピアノとギターが奏でる音楽に酔いしれたり、真夏の長い夜のワインを味わったり、陶芸のワークショップに参加したり、はじめての人と言葉を交わしたり、トークイベントで学んだり…… した。文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアアート、食文化というユネスコ創造都市ネットワークが掲げる7分野が散りばめられたプログラムに触れたことで、7030人すべての人になんらかの新しい出会いがあったことだろう。そのきっかけをひたすら仕込んだイベント、それがグランマルシェ2024「マテリアル」であった。

はじめての出会いや異質なものとの出会い。その体験はゆっくりとそれぞれの心の奥に浸透し、沈澱し、ときをかけて温められてゆくだろう。やがていつの日か、一人ひとりの胸のうちに新しい感覚が芽生えたり、なにかしらの反応が生まれたり、予想もしないかたちで芽吹いたりすることだろう。それは一人のクリエイティブを活性化させるというだけにとどまらず、この山形というまちに生きることの喜び、シビックプライドを大きくゆっくりと醸成させることだろう。
─那須ミノル(real local 山形)─

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